入居以来17年の歳月が流れ、クロスや床材がはがれたり破れたり薄汚くなっていたトイレを思い切ってリフォームすることにした。当初はクロスの張り替えを内装業者に依頼する予定だったが、某ホームセンターのD.I.Y.コーナーで見かけた欧州製の輸入壁紙の美しさにハッとなり、じっくりやれば D.I.Y.でリフォームできるかも、と思い立つ。まあ、長いこと生きているので自分の技量はよくわかっているから、とにかくハードルの低い方法で進めることが肝要だ。でないと材料費や時間が無駄になってしまう可能性が高い。
さっそくネットで輸入壁紙をサーチ。アイテム数が多すぎてあちこち目移りしたが、今回はアメリカのMILTON&KING社がロンドンのMary Evans Picture Libraryとコラボして販売しているヴィンテージ風の "The Fruit Growers Guide"(果物栽培者ガイド)という不織布(フリース)壁紙を注文。パターンのモチーフはフルーツ。本来はキッチンやダイニング用なのだろう、デザインがかなりハデなのでうるさくならないように右側の壁面だけ貼ることにした(タンクと壁面の隙間が数センチしかなくて作業しにくそうだったし)。オーストラリアのブリスベンで製造しているので取り寄せるのに2ヶ月ほどかかるとのこと。壁紙が到着するまでに正面と左側の壁面のクロスに上からペンキを塗ることにした。
ペンキはクロスの上からそのまま塗れるニッペのSTYLE DIYというシリーズから、壁紙の雰囲気と合わせて「しぶ茶」という落ち着いたグリーン色を選ぶ。まずは樹脂製の巾木を取り払い、クロスのはがれたりやぶれているところを接着してコーキング。あとはホコリや汚れを拭き取ってマスキングテープで養生するのだが、この作業がかなり面倒くさい。ほぼ半日ほどもかかってしまった。翌日、朝から塗りはじめて3時間ほどで塗り終えたが、ムラもなく思っていたよりもキレイに塗れた。天井のクロスとの境目もこまめにコーキング処理をしたので塗料がにじんでいない。やはり養生に手を抜かなかったのがよかったのだろう。
この際だから床にも手を入れることにした。素材的には塩ビ製のクッションフロアが扱いやすく施工も簡単で値段もこなれている印象だが、やはり、どこか味気ない。ハードルは高くはなるが壁紙のノスタルジックなイメージに合わせて、ここも思い切ってタイル仕上げにチャレンジしてみる。選んだタイルは岐阜のタイルメーカー、TNコーポレーションが扱う「カラーピッカー」というガラスモザイクタイル。タイルの大きさは1cm角でかなり小さい。さっそくサンプルを送ってもらい検討。本来は壁などの内装用タイルで床には使用非推奨だが、場所がトイレなので荷重や衝撃のダメージもさほど受けないから大丈夫だろう、と自己判断した。TNコーポレーションは製造メーカだが必要な数量だけネットで購入できるので、トイレの面積を算出して310×310mmのシートを13枚注文。あとはタイル用の接着剤と目地材、ゴムベラなどを調達する。
古いクッションフロアをはがし、まずはタイル用の接着剤(セメダイン・タイルエース)を均一に塗るのだが、そうとう粘度があるのでかなり力が要る。ここに前日に位置合わせしておいたタイルのシートを配置していく。塗布してから接着までの時間的猶予は30分(冬場は60分)。位置合わせがうまくいかず、接着剤が硬化しそうでかなりアセったが、汗だくになりながらもしっかり圧着してなんとか貼れた。翌日には目地詰作業が待っている。
あわせて巾木の製作にも取りかかる。市販の樹脂製のソフト巾木はあまりにも風情がないので仕方なく自作することにした。ヒノキ材にカンナをかけ上部の角にアールつけ、ニスを塗って完成。やたらと手間だけはかかってるなぁ…。
タイルの目地詰も予想以上にハードワークだった。タイル目地材(グレー色)を水で溶き隙間に詰めていくのだが、これもけっこう力が要るし、ちゃんと詰まっているか目をこらさないといけない。それにタイルが小さくて詰める面積が広いからだろうか、予想以上に目地材が減っていく。半分くらい詰めたところでついに目地材がなくなってしまい、近所のホームセンターまで走る。ほんとうに息がきれた。が、なんとかくじけずに完了。
ここまできて、あとは壁紙を待つばかりとなったが配送予定日は1ヶ月半後だ。連日の作業で疲労もかなり蓄積しているようだし、しばらくゆっくりしようと思っていたら、チャイムとともにあっけなく壁紙が届いた。壁紙貼りはまだまだ先のこと、とノンキにかまえていたのでちょっとアセる。ともあれ、休むまもなく速攻で道具と糊を調達して、ネットで貼り方の動画を検索して手順を頭に叩き込む。なんだか気がはやってるやんか!(もしかしてD.I.Y.にハマってるのか?)
この壁紙は不織布でできているので壁に糊を塗ってから貼る仕様(紙の壁紙は水分を含むと伸びるので壁紙に糊を塗るんだそう)。まず最初に縦に貼り、そのとなりに柄を合わせて順々に貼っていくだけなのだが、つなぎ目を合わせるのがけっこうむずかしい(パターンは57cmごとにリピートしてる)。隙間があいたり重なったりで、出来は45点って感じ。
まあ、素人がはじめて貼るのでこんなものだろう。でも、すこし離れて見たらぜんぜんノープロブレムですよ!ペンキとタイルの色とのマッチングもぴったりで(すべてパソコンの画面上で色合わせしたのに)作業用の明るいLEDから電球に変えると雰囲気もさらによくなった(と思う)。
出来はともかく、トイレのリフォームをなんとか貫徹させたが、失敗と妥協の繰り返しだった。それでも、できるだけ高い妥協点を目指す努力はしたつもりだ。なによりも、自分でリフォームしたトイレで用を足せることがうれしい!